読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

じいちゃんへ

じいちゃんが死んでしまった。じいちゃんのことを忘れないための記録です。

亡くなった日のこと 1

じいちゃんが亡くなった、5日のこと。

 

母からのLINE。朝10時くらい。

「びっくりさせるけど、じいちゃん死んでしまった。あわてないで家帰る準備して」

 

その日は日曜で、ちょうど家にいた。

すぐに母に電話。わたしも動揺していたが、電話ごしの母もとても動揺していた。

実家は石川県で、現在は大阪で暮らしている。

急いで帰る支度をして、大阪駅へ。

 

いつも帰省はサンダーバードを利用する。

石川県まで、片道2時間半。いつも決まって右側の席に座って琵琶湖を眺めて帰るけど、その日は琵琶湖を見ることすら忘れていた。

 

家に近づくたび、じいちゃんが死んだという事実も受け入れないといけない気がして、足がすくんできた。

とうとう実家に着いた。

妹の車が家の正面に止まっている。しかも道のど真ん中に。急いで仕事から帰って来たんだろう。

玄関にはじいちゃんの名前と、お通夜の日時が書かれた貼り紙。それを見た途端、あぁ、じいちゃんやっぱり死んだの本当だったんだ、そう思ったらなかなか家に入ることができない。

 

しばらく家の前に立っていたら、ちょうど母が出てきた。コンビニでお菓子を買いに行くというので、一緒に着いて行くことに。

家には父方の親戚が大勢集まっていた。十数年会っていなかった従姉妹や埼玉の親戚も。

妹はショックで寝込んでしまっていた。

 

家に戻り、やっとおじいちゃんの元へ。

奥の広間に、じいちゃん、そしてばあちゃんと近所の人が話をしていた。

ばあちゃんのことがとても心配だったが、いつもと変わらないおばあちゃんだった。

 

じいちゃんの顔には白い布が掛かっている。じいちゃんの顔を見たかったけど、なかなかその布を取ることができなかった。

ばあちゃんが「見てあげまっし」と布を取った。

 

じいちゃんが亡くなったのが朝の10時頃。

亡くなる前の夜、じいちゃんとばあちゃんは朝まで会話をしていたらしい。

じいちゃんはもう分かっていたんだろう。朝方救急車で運ばれ、病院で点滴を打っている最中にじいちゃんは亡くなった。心不全だった。

 

死ぬ前、辛かったんだろうなと思っていたけど、じいちゃんの顔はとても穏やかだった。ほんとに寝てるみたいな。

ほんのり頬が赤くなっていて、チャームポイントの長い長い眉毛が、少し整っていた。

 

 普段は信じられないくらい頑固で、ばあちゃんと言い合いばかりしていたじいちゃん。

亡くなる前の夜、どんな話をしていたかは分からないけど、はじめてばあちゃんに「ありがとう」と言ったらしい。ばあちゃんは今まで耐えに耐え続けてきたのだからきっとその一言で報われたんじゃないかな。

 

強くて頑固なじいちゃんにずっと耐えてきたばあちゃんはきっともっと強いからね、大丈夫と耳の遠くなったばあちゃんの耳元で言った。